空が青いように・・・見えない世界の備忘録
不思議な物をよく見るうちの子の記録です
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町田樹さんに関する独り語り バジル、大海原でスパイラル

(書き飛ばしたまま、ため込んでおいた感想をやっぱりアップしてしまいましょう。しかし、まもなく今年のプリンスアイスワールドが始まってしまうじゃないか!!あ、世界選手権が先か)


町田さんの2017年のプログラムの一つ目はバレエの演目「ドン・キホーテ」から。
登場人物の青年バジルを中心に三幕構成で、途中で暗転が入り、ハイライトを抽出した、現役時代から取り組み続けてきたバレエの技術をも余すところなく注ぎ込んで演じた超大作でありました。
こういうのがやりたかったのね。

リンク入退場口の白いカーテンをライトで紅く染め上げ、オーケストラのチューニング音声を流すだけで、このプログラムに格調高い、言わば「額縁」を作り出します。

やってるの見ればね、その位大したことじゃ無いと思う方もあるかもしれませんが、それを思いついて実行に移すのはなかなか大変なのでは。先入観をぶち壊すというか、このお人は常に変化及び進化し続けていらっしゃいますので、発想が常時そのようなのでしょう。

彼はまるで「シェイプシフター」のように思えるときがあります。もちろんいい意味で。
相手そっくりに変化するのではなくて、相手の特質を吸収して装備し、パワーアップしてしまうんですよね。そしておそらく、その相手にも喜びを与えることが出来る。大西コーチしかり振付師のミルズ先生しかり。打てば響くような教え子は可愛いものですよね。

最初に無音でルッツジャンプ。ピシッと片手を伸ばしてようこその決めポーズ。指揮者が現れてご挨拶をするみたい。あっという間にひきずりこまれます。

一幕目は「技のバジル」と銘打ってあるだけに、ジャンプばんばん飛びまくります。
あの、きゅきゅっと捻るところがこう、何というか、非常に見ていて気持ちよくて、うまい演者さんというものは観客に自分がコントロールしているかのように勘違いさせてしまうという誰かが何処かで言っていたことを思い出しました。

二幕の緩やかで広がりのある楽曲に合わせ、豊かなスパイラルをご披露いただきました。
彼が発しているものがあまりに無垢なので、ここを観ると毎回、「ひこうき、ぶううん」と手を広げてかけまわっている少年を連想するわたくしは、ちょっとおかしい。
(ちなみに私はショタではありません。男は24からです。あ、友野一希くんは除きますw)

バジルである町田さんが差し出した、両の掌にこぼれんばかりの豊穣なる恵みは、その夢の一部は、時間と多くの表現者たちの手を経て磨かれ、純化されていずれは・・
継ぐ者である町田さんがあのプログラムで最後に差し出した手のひらの上に載せられることになるに違いありません。継承されてゆく。きっと、そうなる。

三幕の後半、両手をぐるぐる二回まわして、あおりのステップに入るときは、脳内で「うっれしくって、もうたーいへん!!」と言っているようで、ちょっとコメディーぽく見えます。
めっちゃキレキレのステップで、場内もノリノリでございました。町田さんも煽りまくりだったよねえ。

東伏見で拝見した時は、三幕目最後のジャンプの高さに圧倒されました。SS席のほぼ一列目だったのもあるけど、そのまま飛び立っていきそうな高さ。
あれだけの長さの演技の最後ですからね。いや、鍛錬の賜物ですよ。

バジルは逆バレンタインならぬ逆ロミジュリ(男の方が死んだふり)するわけか。
恋人キトリがお金持ちの地元名士の息子と結婚するのを、大芝居を演じて阻止、居合わせたドン・キホーテが皆を諭して、丸く収まる。

原作を読んで思ったのが、ドン・キホーテは意外にまともな名士なのだなという事でした。騎士道小説の事になるとおかしくなるだけで、後は博識だし、いいこと言うんだよね。
子供の頃に絵本か何かで読み、学生時代にテスト対策に著者名と共に暗記していただけの作品でしたが、読んでみるとイメージとは全く別の世界が広がっておりまして、それなりに楽しゅうございました。長くて大変だったけど。
解説を読んで、当時は著作権もなくて、別の人間が続きを勝手に書いてしまった話とか大変興味深かったです。

そういえば、町田さんが引退直前に滑った曲、ベートーヴェンの交響曲第九番もラジオで全部聴きましたが、全くイメージが変りましたね。

私は偏屈なので影響を受けて色々やる事は本当はあまりない人間なのですが、それでもこういう個性の強い方のファンになるとひきずられます。いや、楽しいんですが。

ネットに新横浜公演の情報が上がった時点で、お衣装の赤いベストのポケットの麦の刺繍について連想しました。
麦イコール豊穣の女神ってことで、「デメテル」を想起したのだけど、デメテルには娘を黄泉の王に攫われたという神話があります。
豊穣の女神の傷心のせいで、大地が枯れ果ててしまい、それでは困ると話し合いの末、娘は一年のうち四分の一だけ、黄泉の国へ行くことになる。
愛娘が傍にいない寂しい時期が、この世界にとっての冬であり、このエピソードが「四季」が誕生した由来であるというわけです。
つまり、ここで、2017年のPIWのテーマだった「四季」ともつながるわけで、ダン・ブラウン好きの町田さんなら、ありうることかなと思ったり。きっと、他にも色々な謎ときが散りばめられているのだろうけど、ぱっと思ったのがこの一点でした。

その前の年のプログラムの松田聖子さんの「あなたに逢いたくて」で、『一緒に過ごした日々を忘れないでね~』のところ、一番の歌詞の別れを歌っている、『二人の部屋の扉を閉めて~』の部分で出てくる振付が一部入っていまして、相当に細かく重層的にコレオを組み立てているんだなあと感じたことはあります。

振付に意味があってそれを丁寧に演じてゆくので、表現の密度が濃くなり、世界観が深くなる。
昔、ある小説家が語っていました。
小説を書くときに色々なことを取材するのだけど、それを百のうち一ぐらいしか使わなかったりする。けれども、使われない大部分も必要なのだと。それは行間にあふれるからなのだそうです。
調べ尽くすことが、作品世界を深める助けになるんでしょうね。

PIWに関わる方々にとって色々と影響を与えていると思うんですよ。いい塩梅のカンフル剤になっているような感じですね。私の世界の一部は町田樹で出来ているので、勝手に思うだけなんだけど。

今町田さんは川を下って汽水域を抜け、太平洋の入口辺りを意気揚々と航行中です。(見てきたように言ってみる 笑)
研究もスケートも順調に行っているご様子。

原作のドン・キホーテで、今回町田さんが演じたバジル青年の登場する場面。狂言自殺によって首尾よく目的を遂げることが出来た彼は早速演技を中止します。周囲の人たちが生き返ったと勘違いし、奇跡が起きたと騒ぎ立てる。そこで、バジルが叫ぶ。

「いや、いや、奇跡じゃない。考えたんだ。智恵を絞ったんだ。」(新訳ドン・キホーテ 彩流社より)

大海原で町田さん本人も悠々と帆を上げて、『闊達な知恵者 バジル青年』のように声を張り上げているのかもしれないです。

『考えたんだ。智恵を絞ったんだ。』と。



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